毎日の出入りをもっと安全に!玄関スロープを設置するメリットやポイントについて
- リフォーム豆知識

自宅に玄関スロープを設置するか迷っている方は少なくありません。公共施設ではおなじみのスロープも、住宅ではまだ普及が進んでおらず、疑問や不安を感じるのも自然です。特に、車椅子やベビーカーを使う家庭では、ライフステージや家族の使い勝手に合わせて後付けスロープを検討するケースが増えています。安全性の高い設計のためには、後付けのメリット・デメリットを理解したうえで計画することが大切です。
今回は、玄関スロープのリフォームのメリットや設置時のポイントについてご紹介します。
玄関スロープを設置するメリット
玄関スロープは、高齢者や小さな子どもでも歩きやすく、車椅子やベビーカー、自転車などの移動もスムーズにする緩やかな傾斜の通路です。段差をなくすことで少ない力でも前に進みやすく、車輪付きの道具も安定して動かせます。
こちらでは、スロープを設置するメリットについて解説します。
車椅子での移動がしやすい
玄関に階段や段差があると、車椅子の方は自力での出入りが難しく、わずか1〜2cmの段差でも大きな障害となってしまいます。無理に乗り越えようとすると転倒の危険があり、介助を受けなければならない場面も少なくありません。
そこで有効なのが玄関スロープです。勾配を緩やかにし、滑りにくい素材を選ぶことで安全に利用でき、段差を気にせず1人で移動できるようになります。これにより介護する側の負担も軽減されるだけでなく、気兼ねなく外出や日常の動作ができるようになり、精神的な安心感にもつながります。
子どももベビーカーも安心して出入りできる
玄関に土間やシューズクロークを設けてベビーカーや子どもの自転車を置く家庭は増えていますが、階段や段差があると出し入れが不便になったり、小さな子どもがつまずいて転倒する危険もあります。夜間や急いでいる時は特に注意が必要です。その点、玄関にスロープを設ければ、子どもでも安心して上り下りでき、ベビーカーや自転車もスムーズに出し入れできるため、安全性と利便性の両方を高められます。
玄関の転倒リスクを軽減
高齢者や小さな子どもにとって玄関の段差はつまずきやすく、転倒のリスクが高い場所です。夜間など足元が見えにくいときは特に注意が必要ですが、スロープを設置することで事故防止につながります。ただし、安全のためには勾配を緩やかにすることや、雨や雪の日でも滑りにくい素材を選ぶことが大切です。
玄関スロープを設置するデメリット
スロープは高齢者や小さな子どもにとって大きなメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。こちらでは、スロープを設置するデメリットについて解説します。
設置には十分なスペースが必要
玄関スロープを後付けする際は、使う人や目的に合わせて十分な通行スペースを確保することが重要です。幅の狭いスロープでは、車椅子やベビーカー、自転車の通行がしづらくなったり、かえって邪魔になったりする可能性があります。
また、介助者の有無や勾配の緩やかさを考慮すると、必要なスペースはさらに広くなります。設置前には日常の利用シーンをシミュレーションし、余裕を持った設計プランを立てることが大切です。
アプローチの広いスペースがないと勾配が急になる
玄関スロープを設置するスペースが十分でないと、勾配が急になり、車椅子やベビーカーの使用時に危険が伴うことがあります。急勾配は自転車やバイクでは問題になりにくいものの、足腰の弱い高齢者やサポートする人にとっては負担や恐怖を感じる原因にもなります。そのため、緩やかな傾斜で安全に使える場所を選ぶことが重要です。
費用がかかる
玄関周辺の状況や施工方法によって費用が変わります。階段の高さによっては、勾配を緩やかにするためにスロープの距離を長くしたり、外構の一部を解体する必要がある場合もあります。また、手すりやフットライトなどの安全設備や、住宅のデザインに合わせた素材を選ぶ場合も、追加の工事や部品によってコストが上がることがあります。そのため、安全性や使いやすさ、デザイン性を考慮した計画的な設置が重要です。
玄関スロープを設置する際のポイント
玄関スロープの設置では、幅・勾配・素材の3つのポイントが重要にになります。こちらで詳しく解説します。
ゆとりのある幅を確保する
玄関スロープの通行幅は、車椅子やベビーカーを快適に使えるよう、余裕のあるスペースを確保することが理想です。バリアフリー法の基準では、スロープ幅は最低でも120cm以上が推奨されており、脱輪防止のための手すり設置や立ち上がりの工夫も重要です。自宅用のスロープでは100cm程度でも安全に使えますが、手すりを設置すると通行幅が狭くなることもあるため、余裕を持った幅で設計すると安心です。
勾配は緩やかに設計する
玄関スロープは、安全性を確保するために、勾配をできるだけ緩やかに設計することが重要です。車椅子を自走で利用する場合、バリアフリー法では屋内は1/12以下、屋外は1/15以下が基準とされていますが、これは公共建築物向けの基準です。一般住宅でも理想は同程度ですが、敷地の制約で十分な長さを確保できないこともあります。
その場合は、介助者によるサポートやスロープの折り返し設計、手すりの設置などを検討し、高齢者や小さな子どもが安全に使えるよう配慮することが大切です。勾配が急すぎると車椅子や身体への負担が増すため、余裕のある傾斜での設計が望まれます。
滑りにくい素材や工法を選ぶ
スロープの素材は、住宅や外構のデザインと統一感を意識しつつ、最も重視すべきは安全性です。雨や雪の日でも滑りにくく、水はけの良い素材を選ぶことが大切です。具体的には、防滑性に優れたスロープタイルやインターロッキング、またコンクリートの場合は刷毛引き仕上げや洗い出し工法がおすすめです。
刷毛引き仕上げは表面を粗くすることで滑りにくくし、洗い出しは砂利を表面に出して滑り止めの役割を果たします。また、転倒やつまずきを防ぐために、手すりの設置もあわせて検討すると安心です。
まとめ
玄関スロープは、車椅子やベビーカーの移動を安全で快適にし、ご家族の暮らしの質を高めるバリアフリーの一環として有効です。後付けも可能で、外観に配慮しながら暮らしにくさを改善できますが、設置条件には注意が必要です。スロープの幅や勾配、滑りにくい素材の選定、手すりの併用など、事前の計画が快適で安全な利用につながります。高齢者や小さな子ども、将来の自分のためにも設置を検討することで、日々の生活利便性や安全性を大きく向上させることができます。安全性と使いやすさを両立させることが、玄関スロープ設置の最大のポイントです。